体重減少とは
自ら食事量を減らすことや、積極的な運動で体重が減ることは普通のことであり、体重や外見を気にしてダイエットに励んだ経験のある方は少なからずいらっしゃると思います。しかし、自ら進んで体重を減らそうとしていないにも関わらず、半年から1年の間に体重が4.5㎏以上減り、5%以上の減少した場合には医学的な「体重減少」となります。医学的な体重減少の場合は、何かしらの疾患が隠れている可能性があるため、注意する必要があります。体重の変化に早く気づくためには体重計に乗る習慣をつけることが大切です。体重計に乗る習慣のない方は、「服のサイズが変化した」「ベルトが緩くなった」などの変化があるかどうか振り返ってみましょう。身内や周囲の人から痩せたと指摘された場合、半年〜1年前のご自身と比較してみられることをお勧めします。
体重減少の症状チェック
- 半年~1年の間に体重が4.5㎏以上減少した
- 半年~1年の間に体重が5%以上減少した
- よく食べるのに体重が落ちてきた
- 食欲不振、倦怠感がある
- 食事制限、運動などなく、体重が減少してきた
- 洋服やベルトが緩くなった
- 家族、知人に痩せたといわれた
上記のチェックリストに該当しない場合でも、「何もしていないのに1か月に2㎏以上の体重減少があった」「不自然に体重が減少した」などは医学的な体重減少と判断する場合がございます。
体重減少を引き起こす疾患
体重は運動や食事量を減らすことで、「摂取エネルギー」を「消費エネルギー」が上回るような状態になることで起こります。その他、身体に病原体があって戦っているときにも消費エネルギーは多くなり、がんを患っている場合は、がん細胞によって大量のエネルギーを消費するため、体重減少が起きます。また、主な原因として考えられる疾患は以下の通りです。
逆流性食道炎
主な症状に胃痛・胸やけがあり、これにより食欲低下、体重減少へと繋がります。げっぷの増加・酸っぱいげっぷ・胸痛・咳・声がれなどの症状も起こります。薬の副作用・腹圧を上げる作業、習慣、加齢が原因となって下部食道括約筋の機能低下が起こることで胃酸の逆流が起こり、食道に炎症が起きます。
慢性胃炎
慢性胃炎は、ピロリ菌感染などで発症します。胃痛・胃の重い感じ・胸やけ・腹部膨満感・吐き気などの症状が現れ、炎症と胃の症状とともに食欲低下が起こります。胃の消化吸収能力が低下することで、体重減少に繋がります。
胃・十二指腸潰瘍
ピロリ菌に感染することで発症し、食欲の低下、胃・十二指腸の消化吸収能力の低下により体重減少が起こります。主な症状に胸痛・胸やけ・嚥下困難・吐き気・嘔吐・貧血・吐血・黒い便(タール便)などがあります。
炎症性腸疾患(クローン病・潰瘍性大腸炎)
免疫機能に異常が発生し、腸細胞に攻撃することで腹痛や下痢、血便などの症状が起こります。また、こうした症状が続くことで体重減少に繋がります。
胃がん・大腸がん・膵臓がん・胆道がんなど消化器がん
がん細胞が増殖する段階で多くのエネルギーを必要とし、がん化した器官の消化吸収機能低下・食欲低下が起こり、体重減少へと繋がります。
糖尿病
糖尿病はインスリンの作用不足によって起こり、症状が進行すると食事で摂取した糖質をエネルギーに変えることができなくなり、体重減少になります。
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)
バセドウ病とは、免疫異常が起こることで甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで起こります。新陳代謝が強まることで日常生活を送っていてもエネルギーが大量に消費されるため、食べても痩せる状態となり、結果的に体重減少に繋がります。
拒食症(神経性食欲不振症)
すでに痩せていて、低体重であるのにもっと痩せたい・太ることへの恐怖感があり無理な食事制限・食後に故意に嘔吐・下剤の使用でさらに体重減少してしまう疾患です。
うつ病
食事・日常生活への興味・関心がなくなるなどが現れます。これにより、食べる量・回数が減り、体重減少が起きます。
体重減少の症状と検査
受診する目安
体重減少が起こる原因に、消化器疾患だけでなく様々な疾患が考えられます。食事制限など、ダイエットで体重コントロールをしていないにも関わらず、半年~1年で4.5㎏以上や同じ期間内に5%以上の医学的な体重減少が起きている場合には、医療機関の受診をお勧めします。その他に、以下のように場合でも、医療機関への相談をお勧めします。
- 体重が不自然に減った
- ダイエットなどしていないのに、1カ月に2㎏以上の体重減少があった
- 医学的な体重減少には当てはまらないが、胸やけ・吐き気・ふらつきなどの症状がある